トカイトイナカ

都会と田舎の2拠点生活を実践する子育てラボ

トカイでの情けない日々を経てイナカの自治会との面談

先週は子供のテレビの音、ゲームの音、一瞬も片付かないキッチンに私のストレスははちきれんばかりであった。

仕事も追いつかず、周囲の人との余談にも付き合う余裕がなかった。

時短勤務なのにどうしてこんなに苦しいのだろうか。

世のワーキングママはこんなにも辛い思いをしているものなのか。

微量なノイズが脳にじわじわと蓄積されていく。

蓄積されたそれらのノイズは、疲労物質となって私を侵食していく。

 

限界だ。

これ以上溜めたらまずいことになる。

 

女は、それがたとえそれが母であっても、テレビとゲームにしか興味がない「オス」

には母性がわかないようにできているらしい。

無償の愛で、何かをしてあげたいという思いが枯渇していく。

 

試行を凝らして一人一人の成長に合わせて揃えたおもちゃ。

それらはいつも喧嘩のたびに投げられたり、兄弟喧嘩のもととなったり、

常に部屋中に散乱している。

私は大声でこどもをしかりつけるばかり。

そしてエンドレスな片付け係。

 

いったい何のためにやっているんだろう。

こどもたちを愛でてあげることも、トカイの家を愛でてあげることもできない私が

イナカの家を愛でてあげるなんてできるはずがない。

私にはそのちからが ノコッテイナイ。

その事実がくやしい。

涙があふれる。

 

翌朝はイナカの自治会長との面談だった。

重い気持ちをひきづりながら車に乗って1時間半。

ビルを抜け、街をとおり越し、次第に広がる冬空や紅葉が終わった後の優しい色合い

の山景色に包まれ、少しずつ私のこわばった体が緩んでいくのがわかった。

車の窓から新鮮な空気を胸いっぱい吸い込む。

 

自治会館はイナカの家のすぐそばにあった。

 

移住者支援の一環で、市の職員さんが同席してくださる。

自治会長さんがイナカの自治会の活動についてひととおり紹介される。

 

イナカでは、エリアで組分けがあって、年に数回、組ごとに寺や神社、道の清掃を行なっている。

本来は自治会で所有している山の管理も必要だが、高齢化に伴って手が回っていない様子だった。

自治会長さんによると、自治会への参加に煩わしさを感じ、

加入に拒否感を持つ若い移住者もいるとのことであった。

けれども私たちはそこらへんの心がまえはできていた。

町を利用する限りは、たとえ2拠点生活であっても、積極的に自治会活動に参加していくつもりだった。

むしろそのことを楽しみたい。

そんな所信表明をすることができた。

 

こうした自治会とのマッチングは大変ありがたいシステムである。

こんな機会をいただいたことに感謝だ。

「責任と権限は一致する。」

市の職員さんの言葉に私も同感しきりだ。

 

1時間半ほどで面談を終えた後、もう一度古民家を見に行った。

古民家の庭から空と山が見えた。

すっきりとした空気に、心が晴れあがっていく。

 

古民家は前よりも佇まいが明るくなっているように見えた。

この子も人の出入りが嬉しいんだな、とおもった。

 

その後は子供たちをひとしきり廃校になった小学校で走らせた。

おかげで帰りの車では爆睡。

夫とまとまった時間、たわいのない話をすることができた。

こんな時間はなんて久しぶりのことだろう。

 

契約を終えたら、植えたい木はすぐに植えようね

道の駅で200円で売っていたから、ゆずはいらないかもね

でもゆずの木はもう畑にあったよ

それ以外の実のなる木はいったい何がいいかな 

はやくしないとあっという間に60歳だね

 

1日イナカにいただけで、私の心の老廃物が溶けて、体から抜けているのがわかった。

こどものためと思って始めた2拠点だけど、どうやら私にも必要らしい。

 

明日からまた頑張ろう。

いや、頑張りすぎないように頑張ろう。

次の日、不動産の担当者さんに、最終の連絡をした。

「契約の手続きをよろしくお願いします」