田舎を切望する気持ちの発露
「この年齢で近視はないはずだけどなあ。
おかしいなあ。」
子供のかかりつけの眼科で、お医者さんがつぶやいた時、私はすぐさまその理由に思い至りました。
ずばり、タブレットの見過ぎです。
上の子が4歳、下の子は2歳のときです。上の子はトランプやすごろくが楽しいお年頃。
しかしながら、2歳の怪獣がトランプを破るは、すごろくを踏むわで、上の子は毎日大泣きしていました。
仲裁にはいりたくても、6時に帰宅、7時までに夕飯を食べ、9時に寝かせる(実際は10時就寝)ためには、私は夕飯と家事の雑務を優先させる必要があります。
夕飯をつくる間、兄弟ゲンカは延々と繰り広げられました。
そんな毎日に嫌気がさした私が、ある日、上の子に差し出したのが、子供のオンライン英会話限定という名目で購入したタブレット端末だったのです。
ある程度教育本を読み、知育と称するゲームを選んでインストール。
上の子は仮想空間に自分の安住の地をみつけました。
最初こそ30分の時間制限を設けていましたが、いつの間にか兄弟ゲンカ勃発の都度、タブレットを与えて別々に遊ばせることで解決を図るようになっていました。
ふと気がつけばそんな生活を続けて半年が経過していました。
習慣とは恐ろしいものです。
と、ここまでが回想。
「先生、タブレットを与えたのは私です。猛烈に反省しています。でも先生、いまさらゲームを取り上げることは非現実的です。どうしたらいいでしょうか…」
私は、すがるように眼科の先生に解決策を求めました。
「ニンテンドースイッチにしてテレビ画面でゲームをしましょう」
。。。
なんと具体的な解決策の提示でしょうか。
私は眼科に行った帰りに、息子を引き連れて即座にニンテンドースイッチと、とあるゲームソフトを大人買いしました。
私は予習済みでした。ニンテンドースイッチに「遊び大全51」なるソフトがあることを。遊び大全51には、トランプやオセロなど、弟怪獣の餌食になるこまごました遊びがなんと51種類も収録されているのです。
幸い、上の子はニンテンドースイッチをいたく気に入り、ご機嫌でトランプやマンカラ、五目並べなどに講じるようになりました。
ゲームというのは基本的に数字に強くなるようです。
上の子はもともと数字オタクでしたが、ゲームによってメキメキ実力をつけ、保育園の発達検査において、算数においては4歳にしてすでに小学1年生レベルに達していると判定されました。
「お母さん、何をやったらこんなことになるのですか?ぜひおしえてください!」
保育園の先生に問われると
「いやあ、正直おしえてないんです。
天才ですかね。」などと曖昧な答えをしていました。
ですが内心きづいていました。
ニンテンドースイッチが教えてくれていたのです。しかも公文に通うより効率的に。
この経験を通じて、ゲーム自体がだめなわけではないということを実感しました。
しかし、眼科の先生はもうひとつ、私にアドバイスをくれていました。
「できるだけ遠くを見て、焦点をあわせる練習をさせてくださいね」
。。。
ムズいです。
息子の生活(自宅と保育園の往復のみ)にあるのはコンクリートジャングルのみなのです。
遠くまで見渡せるような視界の広がりが都会にはないのです。
このとき、私は息子を自然の中に連れていきたいという思いが無性に強くなるのを感じました。